ポスト量子署名を使うと、従来の証明書チェーンは重くなります。ML-DSA-44 では、リーフ証明書と中間証明書の公開鍵と署名、2 つの SCT、ハンドシェイクの署名を合わせて約 14.7 KB になります(ECDSA では数百バイト)。MTC の設計(インターネットドラフト draft-ietf-plants-merkle-tree-certs)では、CA は各証明書を自身の透明性ログに追加し、定期的にランドマークとなるサブツリーを指定します。そのハッシュは事前にブラウザーに配布されます。サーバーは、数百バイトの包含証明を付け、署名をまったく含まない証明書を提示します。最新のランドマークを持たないクライアントは、単独で使える連署付きの形式にフォールバックします。
Google は 2026年2月、Chrome が Cloudflare との実験とあわせて、耐量子 HTTPS 認証への道筋として MTC を使う意向であり、現在の Chrome ルートストアにポスト量子 X.509 証明書を追加する予定はないと発表しました。Chrome ルートプログラムは、MTC に基づく耐量子ルートプログラムについて、別個のドラフトポリシーを掲載しています。
ここで説明した内容はすべて、まだ流動的です。ドラフトはバージョンごとに変わり、サーバーと CA のソフトウェアの対応も実験段階です。プライベート PKI では、ポスト量子アルゴリズムを使う従来の X.509(RFC 9881)が引き続き選択肢となります。